不動産ミステリーとして大人気の「変な家」「変な家2」。
その作者の雨穴さんの作品で、間取りとは違ったミステリーの「変な絵」という作品があります。
なんとなく不気味で、一見意味もないように思える絵が登場しますが、これらを紐解くと恐ろしい物語が浮かび上がってきます…
今回は「変な絵」をご紹介します。

個人的には変な家よりも変な絵の方がゾクッとして好きです!
「変な絵」の要約
【基本情報】
- 著者:雨穴(うけつ)
- 定価:1,400円+税
- 発行年月:2022年10月
- 頁数:285
- 出版:双葉社
【目次】
- 第1章 風に立つ女の絵
- 第2章 部屋を覆う、もやの絵
- 第3章 美術教師 最後の絵
- 第4章 文鳥を守る樹の絵
見れば見るほど、何かがおかしい?
変な絵 あなたには、この絵の「謎」が解けますか?
不穏なブログ、
消えた男児、惨殺死体、補導少女……
「奇妙な絵」に秘められた
衝撃の真実とは⁉
変な絵は何かがおかしい9枚の絵を中心に、一連の不可解な事件を紐解いていく、国民的スケッチミステリーです。
9枚の絵はYoutubeでも観ることが出来ます。
みなさんはこれらの絵からどんな出来事、ストーリーが思い描かれると思いますか?





またYoutubeで書籍販売の告知、第1章のあらすじを見ることもできます。
ぜひ雨穴さんの声で聞いてみてください。
2024年10月には100万部を超えるベストセラーとなっています。
著者の紹介(雨穴)

ホラーな作風を得意とするウェブライター。
変な絵 あなたには、この絵の「謎」が解けますか?
白い仮面と黒い全身タイツが特徴的で、ユーチューバーとしても活動している。
YouTubeでは全身黒タイツに白塗りの仮面をかぶった雨穴さんを見ることができます。
動画は「変な家」のようなミステリーや、歌などを投稿しており、不気味な雰囲気が漂います。
ウェブライターとしては、オモコロというWebメディアに記事を投稿しています。
じんわりと怖くなってくる話もあれば、独特過ぎて面白い話がたくさんあるので、ぜひ覗いてみてください。
大人気の変な家、変な家2、最新作の変な地図についても記事を書いているので、読み切った方はぜひ見てみてくださいね。
変な絵の相関図(家系図)まとめ※ネタバレ注意
変な絵では名前が伏せられていてどの人物が同じなのか、一見分からないようになっています。
そこで登場人物の相関図を作ってみました。

黄色で書いている通り、話の中心にいるのは今野直美になります。

今野直美の殺害遍歴が赤の矢印で示しています。
まとめていて思いましたが、とんでもない殺人鬼ですね…
殺人の背景は同情する部分も一部ありましたが、どんどんエスカレートしていくさまが恐ろしいですね。
感想
変な絵の謎という面白い着眼点

今回は絵から作者の心情や意図を読み解き、事件解決や異変に気付くというものでしたが、面白い仕掛けだなと思いました。
第1章の由紀の5枚の絵は、今野直美に殺害されることを暗示していました。
分かりやすい仕掛けで納得です。
第2章の優太の描いたモヤがかったマンションの絵は、亡き母親由紀のお墓を書こうとしたのを消した跡でした。
正直これを推察したのは無理やり感あるなと思いますが、フィクションなのでご愛嬌。
ただ幼稚園生が母を困らせようとお墓を書いて直美に渡そうとしてるの、やってることえげつない(笑)
第3章の三浦義春、岩田俊介の山の絵は、直美に殺される最中に折り目を付けて記憶を頼りに山の風景を見ずに書き、死亡推定時間をずらす犯人のトリックと殺害方法を示したものでした。
ボコボコにされてる最中に犯人の前でばれずに絵を描くというのもすごい意志です…
第4章は冒頭にも出てくる直美の母殺害後の心理カウンセリング時の絵です。
精神に異常をきたしている人は不気味で普通ではない絵をかきますが、直美の絵には母トラウマからくる笑顔、愛するものを守るために危害を加える者を攻撃する木の枝などが描かれています。

作者の背景を踏まえて見ると、絵に心情が反映されているのが理解できます。
ホラー関係なく、美術品も本当は作者の癖とか想いを読み取るともっと楽しめるんだろうなーと思いました。
変な絵と似たようなコンセプトの作品で、【奇妙なブログ】消えていくカナの日記というYoutube動画もあります。
変な絵好きはこちらも好きなはずなので、まだ観てない方は推理しながら見てみてください。
変な絵を見た後に視聴すると、最後にゾクッとすると思います…
今野直美に一部同情(周りのクズさ)

今野直美は母、三浦義春、岩田俊介、豊川を殺害し、今野由紀を間接的に殺害、結果的に息子の武司を自殺させ、熊井を刺し殺そうとしました。
4人殺害、2人を間接的に殺害、1人を殺人未遂ととんでもない殺人鬼の直美ですが、一部同情の余地もあるような気がします。
まずは母の殺害。これは小鳥のチッピが母に殺されかけたため、11歳の少女としては強行に出るのも無理はないと思います…
母はペットを殺そうとするクズ!理解できません。
そして豊川。義春殺害を見られていたことで揺さぶられ、体の関係を余儀なくされ、しかも子供に行為をわざと見せつけるようなこともしています。クズです。
そもそも揺さぶられるような義春殺害が根本原因ですが、自分だけでなく子供に悪影響となると仕方ないのかもしれません…
この二人に関してだけは同情の余地あり派。
ただ義春については如何様にでも守る(義春から離れる)方法はあったし、俊介、豊川は義春を殺さなければ防げた気がします。
あれだけ可愛がっていた由紀の殺害は私利私欲、守る対象だった武司自殺も直美の自業自得です。
最初の母殺害で、殺人のハードルが下がってしまった、狂ってしまったのが詰んでますね。救いがない。
悪人には悪人が寄ってくるし、正義の味方も自分を打ち倒しにきます。

悪いことはするもんじゃないですね。
痛々しい・緊張感のある描写が多めで怖い

本作ではまあまあ人が死にますが、特に三浦義春と岩田俊介の死に際は詳細に書かれているため痛々しいです。
特に脚を折られるところ、、、
被害者視点で描かれ、しかも目隠し状態なのでより感覚が敏感に書かれている気がします。
そして母との格闘。これは少女の直美が必死に小鳥のチッピを助け出すため大人の母を殺すハラハラシーンでしたが、少し直美を応援してました。
変な家シリーズでも直接殺している描写はあまりない印象だったので、新鮮でした。
また被害者ヅラしてましたが、今野直美が中盤から謎の男(熊井勇)に追いかけられるところも不気味でかなり緊張感がありました。
※真相は熊井が直美のこれまでの悪行に気付き、自分を襲わせて逮捕させることでしたね。

このハラハラ感も含めて、変な家よりも読んでいてハマりやすいポイントかなと思いました。
最後まで残った疑問点

本作ではさらっとしか触れられず、最後まで理解できなかった部分が2点ありました。
1つ目は義春が描いた山の風景を、本当に妻の直美を庇うために書いたのかです。
この義春の絵が事件解決まで時間をかからせた原因ですが、実際直美をどう思っていたのかそこまで触れられずに終わってしまいました。
個人的には納得不足。
2つ目は栗原がどうやって真相に辿り着き、最後に足に包帯を巻いて熊井の横の病室にやってきたかです。
岩田や熊野のように体験や記者情報が不足している中でどうやって推理したか理解できません。
あと足は何の怪我でしょうか?わんちゃん事件を追ううちに同じように直美に襲われたとか?山道でこけたとか?
タイミングよくケガをしてタイミングよく襲われた熊井の横のベッドに入院するなんて出来過ぎてますよね。
熊井を見越して接触するためにやってきたとしか思えません。

毎度毎度栗原の推理力は凄まじい!
まとめ

今回は変な絵という本をご紹介しました。
物語は語り手がコロコロ変わる為感情移入しやすく、恐ろしいシーンも多いためかなり満足感があり読みやすかったです。
絵の考察のミスリードも多く、最後の直美が書いた絵も、最初と最後では見え方が変わってくる点もゾクッとしました。
物語を整理する、時系列を揃えるなどして何度も読み返してみるのも面白いです。
ちなみに本の最後には雨穴さんの朗読リンクもあるので、まだ聞いてない方はぜひ聞いてみてくださいね。





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